こんにちは。福祉Biz.の高橋潮です。
今回は、魅力的な取り組みをされている法人様に取材に行ってきましたので、その内容を大公開します!
今回お伺いした法人様は、「NPO法人クッキープロジェクト」。障がいのある人もない人も「まぜこぜ」になって暮らす社会を目指し、障がい者の社会参画の推進などを行っている非営利法人です。現在は、埼玉県内で2か所の店舗を持ち、埼玉県内の事業所で作られたお菓子やアート作品などを販売する代行業を行っています。また、設立12年目を迎える2020年3月にコミュニティカフェ・マーブルテラスをオープン。マーブルテラスは北浦和のコミュニティー型多世代交流賃貸住宅「コミューンときわ」の一角にあり、様々な福祉施設の商品販売だけでなく、カレーやタコライスのランチ営業も行っています。内装にもこだわっており、埼玉県内の作業所で作られた机を置き、アート作品も利用者の作品を展示・販売しています。子育て中の親子が気軽に立ち寄る地域の縁側的な存在を目指しています。今回取材に応じてくださったのは、代表理事の若尾明子様、理事・広報担当の谷居早智世様です。お二人にクッキープロジェクトの成り立ちや取り組み、そしてこれからのことをお伺いしました。
1.クッキープロジェクトの成り立ち
クッキープロジェクトさんにとってのターニングポイントは、2011年3月11日に起こった東日本大震災でした。2008年に「クッキーバザール」という作業所が出店する販売会する事業としてスタート。しかし、2011年に震災の影響で、販売会が中止を余儀なくされ、埼玉県内の作業所は販路を失ってしまいました。それをきっかけに新たな取り組みとして常設販売を試みたと言います。そして、2020年に新たにコミュニティカフェという機能を付加した新事業「マーブルテラス」をスタートしたとのことです。 様々な地域で、販売会は行われていますが、常設店舗を持つクッキープロジェクトさんの取り組みには大きな特徴があります。それは、販売会がメインではなく、商品開発をメインにしているところです。商品開発の講座を連続開催し、そこで開発された商品の発表会として販売会を位置付けています。そのおかげもあって、参加する事業所の商品力はみるみる向上。すると、徐々にお客様からも「この商品はどこで買えるの?」という問い合わせが増えてくると言います。そのようなお客様に常設店舗にお薦めするような流れを作っています。実際にお客様にとっても選ぶ楽しみを提供できており、地域にとっても事業所にとっても、なくてはならない存在になっています。
2.クッキープロジェクトの4つのポイント
(1)福祉事業所が地域で喜ばれるための入り口から出口までを提供
上記でも述べた通り、クッキープロジェクトでは、販売会を目的とせず、商品開発をお行い、お客様に喜ばれることを体感してほしいということを目的としています。そのため、講座での商品開発→販売会でのテストマーケティング→マーブルテラスでの卸販売といった形で一から十まで作業所のお手伝いをしています。そうすることで、参加者も「売れるモノってなんだろう」という商品に対してお客様目線になり、そしてその販売会などを通して、お客様に喜んでもらったものを継続的に提供でき、安定した工賃を獲得することが可能になります。
(2)クッキープロジェクトが目指す「まぜこぜ」の実践
クッキープロジェクトという名前にしたきっかけは、クッキープロジェクトが目指す「まぜこぜ」にありました。全国どこの作業所に行っても、クッキーを提供しているところがたくさんあると思います。しかし、だからこそみんなが作っているクッキーが売れたら事業所も喜ぶかもしれないということがきっかけで、名前をクッキープロジェクトにしたと代表理事の若尾様は話してくださいました。最初は、福祉作業所の商品開発支援事業としていましたが、あえて「クッキープロジェクト」とすることで、他のクッキー好きの人なども集まるようになったといいます。実際に、商品開発を行う講座では、商品のラベル提案やパレスホテル大宮のシェフによる品質強化アドバイスを行っていますが、その講座に参加する人たちは、半分一般、半分作業所という形で行っており、まさにクッキープロジェクトが目指す「まぜこぜになって暮らす社会」を実践しています。実は、理事を務めている谷居様も、元は講座の受講生。就労福祉の販促力を強化することを目的とした「PR塾」という勉強会に参加し、そのご縁でクッキープロジェクトに携わるようになったそうです。
(3)様々な作業所の商品を詰め合わせた「仲良しギフト」の展開
福祉事業所でギフトを提供することは困難を極めます。1商品を100個作ることは可能ですが、一作業所でギフトセットを作るには限界があるのが現状です。しかし、クッキープロジェクトでは、それを分散し、様々な作業所の商品を集めてギフトとして提供することで、ギフト提供を可能にすると同時に、埼玉県内の地域福祉のブランディングを行っています。
(4)専門家とのコラボレーション
(2)でも述べたように、クッキープロジェクトが行う講座では、パレスホテル大宮のシェフによる品質強化アドバイスを行っています。しかし、それだけではなく、そのシェフとコラボレーションをしてギフト提供も行っています。今年の夏のギフトでは、「ジュエリーフルーツゼリー」というギフト商品を展開。商品自体はシェフが腕によりをかけて商品を製造し、そのリーフレットに詩が上手で「ぼやきパフォーマー」として活躍する利用者がそのゼリーを食べて考えた詩を載せています。このように専門家とのコラボレーションによって、商品の品質向上・高単価の実現はもちろん、利用者の表現力を発信する機会を提供しています。
3.最後に
代表理事の若尾様はこれからのクッキープロジェクトが目指すことをこのように語ってくださいました。
「これからクッキープロジェクトが目指すところとして、障がい者と地域社会にとって支援する・されるという関係そのものを変えていきたい。『おいしいクッキーを作ってくれる障がい者がうちの街にいてよかった。ありがとう。』『あそこの店をやっていてくれることがうれしい』と言われる存在にしていく。そうすることで、いろんな価値を発信していきたい。商品が売れないのは、商品が悪いわけではなくて、ちゃんと届けられていないから。だからこそ、クッキープロジェクトの取り組みを通して、自分たちの商品が喜ばれるものだという実感を積み上げていってほしい」
クッキーから就労福祉を変えようするクッキープロジェクトの取り組みは、支援の一環の作業としてモノを作るだけではなく、利用者が作ったモノを通して、お客様に喜んでもらえるような社会づくりを実現する一つの可能性なのかもしれません。
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